ＫＭＣゆかいなStaffブログ

ＮＨです。今日の内容は文字が多くて申し訳ありません。

ブルーＲさんからのおさそいがあり、９月２日の日曜日に那覇市民会館の市民公開講座に行って来ました。
テーマは“切らずに治すがん治療”で主催は沖縄セントラル病院です。
沖縄セントラル病院はブルーＲさんと私の前職場で、院内にはガンマナイフセンターがあり、ここでは主に脳腫瘍や脳動脈奇形の治療を行っています。

ガンマナイフが優れているのは、通常の脳外科手術のように頭を切り開かず、放射線を使って体の外から腫瘍を治療する事が出来るため、全身の負担や、リスクが少なくて済みます。しかしながら、すべてＯＫかというわけではなく、腫瘍が大きかったり、脳全体に散らばっていたりすればやはり、他の方法がとられるわけで、けっして万能ではありません。

ガンマナイフという名前はコバルト６０から放出されるガンマ線という放射線を虫眼鏡の焦点の様に一点に集中させ、あたかもナイフで腫瘍を切り取ったように細胞を死滅させることが出来る事に由来しています。
ガンマナイフについて詳しく説明するとこのページでは足りませんので、ほかの方に譲り、講演の中で大阪大学名誉教授の中村仁信先生お話された「放射線被ばくの人体影響」について、非常に興味深かったのでご紹介します。

中村先生は放射線科医で日本放射線防護委員会の委員長であり、さらにICRP（国際放射線防護委員会）の委員を歴任されています。

放射線の人体に及ぼす影響は、ある線量以上あびると必ず影響が出るもの「確定的影響」と明確な線量は無いものの、将来影響が出るリスクがあがるもの「確率的影響」に分けられます。前者は短い時間に高い放射線を浴びたときの評価に、後者は低い線量を長期間にわたってあびたときの評価に使います。

中村先生によると放射線の人体に及ぼす影響は「活性酸素」を発生させることに尽きると言われていました。
活性酸素は、人間の細胞を壊したり、遺伝子の配列に影響を与えたりします。そしてこれによって細胞ががん化するというリスクが発生します。
この活性酸素は放射線被ばくだけではなく、運動や食品、たばこ、飲酒、化学物質、はては呼吸をするだけで発生します。これらはすべて発がんのリスクとなりますが、放射線とたばこ、過度な運動と飲酒のように複合するとさらに発がんのリスクが高くなるとしています。

放射線によって発生した活性酸素は細胞を傷つけ、遺伝子の配列に影響を与えます。
しかし、正常細胞はある程度の障害は修復してしまいますし、修復できない障害を負った細胞は自滅や免疫細胞によって破壊されてしまいます。実際、体のなかでは毎日がん細胞が産生されていますが、健康な人ががんに侵されないのは人体が持つこうした働きが正常に機能しているからにほかなりません。
低い線量の放射線で受けた細胞の損傷はこうした修復機能が働き、結果としてがんという異常細胞のかたまりに発展する事はないのです。

ところが多量の放射線を浴びると、この修復機能が追いつかずがんが増殖し正常細胞や組織を押しやり、やがて組織や臓器が機能しなくなって個体の死につながってしまいます。さらに高い線量では細胞自体がもはや増殖できなくなり死滅します。

それではいったいどの程度の量が危険なのでしょうか？
ここで中村先生はひとつの答えを出していました。放射線による影響を受けやすい骨髄のがんである白血病を例にとり、その自然発生率と放射線の影響による確率が等しくなる１００ｍＳｖをひとつの目安とし、１００ｍＳｖ以下の放射線被ばくはなんら影響がなく、むしろ１００ｍＳｖ以下では発生率が低下していて体にいいと言い切っておられました。低線量放射線の環境に置かれることで修復機能が増強されるという、いわゆる放射線ホルミシス効果というものです。

放射線が体にいいといわれても、あまりしっくりきませんが、データを示されると妙に説得力があります。
そういえばラドン温泉やラジウム岩盤浴は有料の放射線被ばく施設ですし、インドのある地方の自然放射線量は年間２８ｍＳｖでわれわれ日本人の３０倍近くですが、特にがんが多いという事は聞きません。私には判断のつかないところです。

ところで、私は放射線技師なので一般の方より放射線を受ける機会が多いのですが、中村先生の言葉をお借りすれば長生きできるという事でしょうか？

低線量被ばく→長生きできる→釣りに行く機会が増える→大物に出会える確率が上がる（必ず大物を釣る回数が増えるわけではない）？確率的影響？